今回も読んでいただき、ありがとうございます。
前回のコラムの中で、主にeスポーツキャスターとして活動しているという話をさせていただきました。
その中でも多くの試合を担当させていただいているのが、UBISOFT社開発の『レインボーシックスシージ』(以下、R6S)というタイトルです。
2017年に発売された本タイトルは現在も世界各地でプレイされており、2022年10月の時点で世界総プレイヤー数が8,500万人に到達しました。
ゲームジャンルでいうと、FPS(First Person Shooter)と呼ばれる一人称視点のシューティングゲームとなります。
5対5のチーム戦となり、1ラウンド3分。ラウンドによっては、攻撃と防衛に分かれて勝敗を競います。ゲーム内容を説明するとかなり長くなってしまうので、ご興味がある方は、こちらの大会の様子を一度ご覧いただけると嬉しいです。(私が試合の実況を担当しております)
Blast R6 Major Copenhagen 2023 Phase 1 Day 1
国内リーグはあの大企業が運営
では、このR6S。国内の競技シーンがどうなっているのか、説明します。
プロ野球やJリーグと同じように、日本プロリーグが存在します。
その名も『Rainbow Six Japan League』、略したRJL(以下RJL)となります。
2021年に新設された本リーグは今年で3年目を迎え、8チームがこのRJLに所属し、年2回シーズン王者を賭け、争っています。
このリーグは、X-MOMENTが運営しています。
では、このX-MOMENT。どの企業が立ち上げた事業かご存知でしょうか?実はあの携帯キャリア大手のdocomoが運営するeスポーツ事業なんです。
現在、docomoはこのX-MOMENTにおいて、”世界につながるeスポーツリーグ”の創設・運営を目指しており、その一環として現在R6Sの国内リーグを運営しています。
このように、docomoのような大手企業がリーグに携わっていることからも、現在のeスポーツへの期待が伺い知れるのではないでしょうか。
では、このX-MOMENTの支援を受けて、RJLの先に世界はあるのか。はい、もちろんです。RJLで好成績をおさめることで、世界への扉が開かれます。
そして、この原稿がアップされる今現在、世界大会”BLAST R6 Major Copenhagen”(以下、コペンハーゲンMajor)が開催されています。
日本チームに大きく開かれた今年の世界大会
それでは少し世界大会についてお話しましょう。
R6Sでは、今年から来年頭にかけて世界大会が3度行われます。現在、行われているコペンハーゲンMajorと11月に北米での開催を予定している世界大会が、各エリアのリーグと直結した”Major”と呼ばれる世界大会となります。
来年の2月に行われる”Six Invitational”は、そのMajorで好成績をおさめたチームのみが出場を許される世界大会となります。Six Invitationalは年間王者を賭けた戦いとなり、この大会で優勝することがR6S競技シーンにおいて、最大の栄誉とされています。
今年から大会形式が変わり、日本からは3チームが出場可能となりました。
RJLの成績上位2チーム、そしてRJLチーム以外のチームを交えたオープントーナメントを勝ち抜いた1チームの計3チームが出場しています。
過去に日本チームは何度もR6Sの世界大会に出場しています。
しかし、昨年までは世界に出場するためには、韓国やオセアニア、東南アジアなどのチームと競うAPACリーグでの勝ち抜けが必要でした。そのため、過去に世界大会に日本チームが複数出場したことは1度しかなく、その際も2チームでの出場だったため、今回の3チーム出場はR6Sの歴史において初となります。
今回のコペンハーゲンMajorには、KAWASAKI SCARZ、NORTHEPTION、Donuts VARRELが出場しています。
コペンハーゲンMajorに出場する3チーム(レインボーシックス公式Tiwtterより)
少し各チームの紹介をしておきましょう。
まずは、KAWASAKI SCARZ。
2022年の完全王者。2022年のRJL全てのタイトルを獲得しました。実績をみていただいて分かるとおり、現時点の日本最強チームです。今シーズンも、最上位成績を勝ち取り、コペンハーゲンMajorに挑みます。
絶対的リーダーのPyon(ぴょん)選手を中心に、チームプレイを得意とします。どんな困難な状況でもチームを立て直し、試合中に次々と新しいアプローチを見いだせるのが魅力です。
次に、NORTHEPTION。
昨年はRJLには所属していませんでした。
年に1度行われる昇格戦を勝ち抜き、今年からRJLへ参入。ただし、その実力は昨年から注目されていました。
昨年RJLチーム以外で争う大会カテゴリで優勝し、RJLチームとのオフライン大会に出場。そこで、次々とRJLチームを倒し、先に示したSCARZと決勝で接戦を演じました。
Nina(にな)選手、ShuReap(しゅーりーぷ)選手という次世代のアタッカーが中心となり、次々と相手をなぎ倒す力強さに溢れたチームです。
最後に、Donuts VARRELとなります。
こちらも全く注目されていなかった2021年。X-MOMENT主催で行われた国内最大の大会『JAPAN CHAMPIONSHIP 2021』でいきなり優勝を成し遂げます。こちらも当時はRJLに所属しておらず、2022年にRJL昇格。その勢いのまま、今回のMajor出場を決めました。
今シーズンから加入したOkOmEsH(おこめっしゅ)選手がチームの中心となり、相手が読みづらい作戦を繰り出すのが魅力のチームです。
実は、この3チーム全てが世界大会初出場となります。(選手としても世界大会経験者はなし)まさにX-MOMENTが育て上げた3チームといっていいでしょう。
彼らが世界の舞台でどういった戦いをしてくれるのか、楽しみです。
※残念ながらこの原稿を執筆時点(2023/04/28)で、Phase1(1次リーグ)において、NORTHEPTIONとDonuts VARRELは敗退してしまいました。
R6Sで活躍するチームは、他タイトルでも有名なビッグチーム
では、R6Sの世界大会において日本チームは優勝が可能なのかと聞かれると、「可能性はかなり低い」と答えざるをえません。
それでは、もう少し現在行われているコペンハーゲンMajorについて、説明しておきましょう。
コペンハーゲンMajorには、日本から3チームが出場します。それ以外の地域の出場チーム数は、以下のとおり。
・EU 4
・NA 4
・ブラジル 4
・韓国 3
・アジア 2
・南米 2
・中東 1
・オセアニア 1
となり、計24チームとなります。
大会形式としては、まず16チームが4グループに分かれて、ダブルエリミネーション方式のPhase1を戦います。ここで8チームが勝ち抜けとなります。
Phase1組み合わせ(Rainbow Six Esports公式Twitterより)
そして、勝ち抜いた8チームと残りの8チームがここから出場し、再び8チームの勝ち抜けを決めるPhase2を行います。このPhase2はスイスドロー形式となります。
最後に、勝ち抜いた8チームが1発勝負のトーナメントで優勝を決める。というのが、今回の大会形式になっています。
では、世界大会ではどのチームが強いのか?を語る前に、もう1度皆さん、上記の出場チーム数に注目してください。
最も出場チームが多いエリアは、EU、NA、ブラジルとなりますが、R6Sの競技シーンが登場してから今日まで、この3つのエリアに所属するチームが優勝を奪い合っています。この3つのエリアがR6Sの競技シーンにおいて、突出して実力があるといって間違いないでしょう。
それでは、各エリアの注目チームを簡単に紹介しておきます。
・G2 Esports(EU)
言わずと知れたeスポーツ界の巨人です。
R6Sだけではなく、様々なタイトルの世界大会で優勝経験を持つビッグチームです。
先程記したR6S大会において最も権威のある大会、Six Invitational2023で優勝したチームでもあります。
最も完成されたチームであり、今大会に対するモチベーションも高く、優勝候補筆頭といえるでしょう。
・DarkZero Esports(NA)
R6Sの競技シーンも7年続いているため、タイトルを数個獲得した、いわゆる”伝説的プレイヤー”が存在します。それがこのチームに所属するCanadian(カナディアン)選手。複数の世界優勝経験はもちろん、それ以外にもR6S競技シーンで語られる数々の名シーンを生み出したプレイヤーです。
そんな彼が中心となったチームが、このDarkZero。
形式こそ今大会とは異なりますが、昨年最初に行われたシャーロットMajorで優勝しているチーム。今大会も上位進出は間違いないでしょう。
・Team Liquid(ブラジル)
こちらもG2同様、eスポーツ界においてその名を聞いたことがない人はいないというくらいのビッグチーム。R6Sが最も熱い地域として知られるブラジルにおいて、長く好成績を残しています。
Nesk(ネスク)選手、Paluh(パルー)選手といったブラジル国内最高と言われる選手が所属しており、近年ではあと一歩で優勝できないという大会が続いていますが、万全の状態で今大会をむかえています。
日本のファンにとって、R6Sの世界大会の見どころは、もちろん日本チームがどこまで勝ち上がれるか。
しかし、一方で世界の強豪たちによるハイレベルな試合を観ることも、日本ファンの楽しみになっています。それはサッカーと同じように、日本のサッカーファンであっても、フランスやブラジルの試合を観るのを楽しみにしている。あるいは、メッシやC・ロナウドのプレイを楽しみにしていることと何ら変わりません。そういった心理は、トップスポーツと通じるものがあると思います。
ですので、eスポーツに興味があるけど、よく分からないという方は、一度試しに配信をご覧になってはいかがでしょうか。思った以上にトップスポーツと変わらない情熱、感動を味わえると思います。
レインボーシックス公式チャンネル
https://www.youtube.com/@rainbow6jp
今回も最後までお読みいただき、ありがとうございます。
それではまた次回。
筆者:ともぞう
ともぞうと申します。
eスポーツに馴染みがない方はいきなり「え?」と思われることが多いかもしれません。eスポーツ界では本名ではなく、ゲーム内のハンドルネームで活動することが多く、この名義で5年ほど活動しております。
2017年までゲーム関係の会社で働いており、2018年からフリーランスに。その後、オーディションを経て、現在はeスポーツキャスターを主に活動しております。
この度、"広くeスポーツの魅力を伝えてほしい"というご依頼をいただき、私自身より多くの方にeスポーツを知っていただきたく、担当させていただくことになりました。
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