Masters Tokyoは開幕から9日を経過し、ついに勝ち残っているチームが全体の半分を割り込んだ。本記事では、day9のLower Bracket Quarterfinalsの2試合のマッチレポートをお届けする。
Team Liqiud vs NRG
Lower Bracket Quarterfinals第1試合は、EMEA1位通過のTeam LiquidとAmericas 2位通過のNRGの組み合わせとなった。
あの絶対王者Fnaticをプレイオフの決勝で破り、下馬評を大きく覆しEMEAを1位で突破してきたこのTeam Liquid。
今大会初戦はEdward Gamingに勝利するも、次戦Upper Bracket Semi Finalで今世界で一番勢いに乗っているであろうEvil Geneusに完敗を喫した。
それでもあのFnaticに勝利した実績に間違いはない。あのPlay Off Finalを再現できれば彼らの前に敵はないはずだ。
EMEAでトップクラスのスタッツを残したデュエリストSayfに注目だ
レギュラーシーズン後半にどんどん調子を上げていき、群雄割拠のAmericasを3位で突破してきたNRG。
今大会はFnaticにこそ敗れたものの、NAVI、DRXといった強豪に勝利しここまでやってきた。
crashiesとVictorのコンビは二人で残された場合のクラッチ率がここまで異常な高さを示しており、相手チームからしたらNRG相手にはどんな有利状況を作っても安心はできないはずだ。
レイズのブラストパックが世界で一番巧みと名高いのがこのVictorである
下馬評
試合前の段階で両者の評価は拮抗しており、熱い熱戦が予想されているようだ。
GG.BET(海外のベッティングサイト)のオッズ
Team Liquid勝利 1,73倍
NRG勝利 2.03倍
Twitch公式放送での視聴者予想
Team Liquid勝利 47%
NRG勝利 53%
1st HAVEN
( pick - NRG Defender Side - Team Liquid )
ファーストマップのヘイブンの結果はこのようになった
開幕のピストルはs0mの裏どりとAスタックを活かしTeam Liquidが取得。
またこの開幕のTeam Liquidの動きは5thラウンドでも見られ、sayfのオペレーターとCの4スタックで調整バイのTeam Liquidがスリフティー。
6thラウンドには両チームのロックダウンが展開する中で、捕まったsayfとs0m同士が対面して踊る珍プレーも見られた。
Aメインの取れないNRGはCラッシュに活路を見出すも、ロックダウンなどで対応されてしまい前半はTeam Liquidが8-4でリードして折り返す。
後半もピストルはTeam Liquidが取得。
10thラウンドではチームのサイト進行から一人離れ、ガレージ内に残ったnAtsがクワドラキルで全てを止めて見せた。yukishiro「nAtsが修羅と化しましたっ!」
しかしここから勢いにのるのがNRG。
17thラウンドはardiisのオペレーターのトリプルキル、18thラウンドにはardiisがsoulcasとの1on1を制し、ラウンド3連取。
さらに20thから24thまでラウンドを5連取し、先にマッチポイントに到達していたTeam Liquidに追いつき試合はオーバータイムへ。
25thラウンド、NRGは課題だった攻めを取り切り、さらに26thラウンドでは完全にリテイクを通りし切る。
なんと最後にはラウンド7連取で、NRGがHAVENを勝利した。
2nd ASCENT
( pick - Team Liquid Defender Side - NRG )
セカンドマップのアセントはこのような結果になった。
このマップはcrashiesの1v2クラッチで幕を開ける。
交互にラウンドを取り合っていき、このセカンドマップもやはりシーソーゲームの様相を呈する。
Team Liquidのテンポを遅らせたサイト進行と、NRGの素早いリテイクの差が目立つ試合展開となっていく。
しかしnAtsの死なない立ち回りが刺さり続け、Team Liquidが流れをつかみ出し前半を7-5とリードして折り返す。
後半のピストルもTeam Liquidが取得、さらに2ndではsoulcasの体を隠しながらのスーパー1v2クラッチが見られた。
17thラウンドには落ちているスパイクに対し、s0mのフロムザシャドウズによるスパイク拾いへの対策としてTeam Liquidが3人でライドオン。まさかこの大会でこんな小技が見られるとは、と会場は歓声に沸いた。
18thラウンドにはsayfがエイム力だけでAサイトを完封するなど、安定した試合運びを見せたTeam Liquidは20thラウンドにマッチポイントに到達、そのまま21thラウンドを取り切り、このマップの勝者はTeam Liquidとなった。
3rd SPLIT
( decider map Attacker Side - NRG Defender Side - Team Liquid )
ディサイダーマップのスプリットはこのような結果になった。
(画像引用元:https://liquipedia.net/valorant/VCT/2023/Masters)
開幕のピストルラウンドはTeam Liquidが取得するも、2ndラウンドはNRGのスリフティー。
序盤NRGはB攻めを止められ続け、ならばと選んだAスロープラッシュも止められるやや苦しい展開。
それでもタイムアウト後、ベント側へのショーストッパーなどでようやくAサイトを攻略。
10thラウンドでNRGはラウンド残り15秒でのBサイトから Aサイトへのローテート。Team Liquidを翻弄してみせた。
soulcasのクアドラキルに壊される場面こそあったものの、常に優位を保ち続けたNRGが前半を8-4とリードして折り返した。
後半ピストルもサイト内で広くエリアを確保したNRGが取得し、また3rdラウンドもNRGはラウンドこそ落としたもののTeam Liquidを全滅まで持っていった。
後半もNRGがハイテンポでラウンドを重ねていき17thラウンドにマッチポイントに到達し、次の18thラウンドを確実に取得。
このマップを勝利したNRGが次の戦いに駒を進めることになった。
Paper Rex vs Edward Gaming
Lower Bracket Quarterfinals第2試合は、pacific1位通過のPaper Rexと中国のEdward Gamingの組み合わせとなった。
レギュラーシーズンは開幕当初こそ苦戦していたものの、最終的にはpacific MVPを獲得することになるsomethingの加入後は敵なしだったPaper Rex。
しかしそのsomethingがビザ問題で出場できない今大会は、タイのesports界の重鎮cgrsがpacific MVPの代わりという誰にとっても重すぎる役割を務めている。
前日にFnaticに圧倒的な力の差を見せつけられ敗れたことで「somethingのいない彼らはやはり世界で勝てない」との声も高まるものの、元世界2位として、そしてpacific王者として、負け知らずの恐竜の歩みはこんなところで止まらないはずだ。
somethingの欠場で、却ってデュエリストとして思う存分暴れられる、アジア最強の一人f0rsakenに注目だ
Evil Geniusesと共に今大会の顔となりつつあるのがこのEdward Gamingだ
今大会ここまでNAVI、LOUDの両優勝候補を倒す大金星を挙げ続け、中国チームの世界大会初勝利からついにこの世界ベスト6まで登り詰めてきた。
開幕前まで世界的に名が知られているのはZmjjKKくらいのものだったが、ここまでの試合の中で、他の4人にもZmjjKKに匹敵するポテンシャルがあることがだんだんと明らかになってきている。
彼らのシンデレラストーリーは、一体どこまで続くのか。
やはり注目はエースのZmjjKK。彼のオペレーターは百発百中だ。
下馬評
somethingのいないPaper Rexと今勢いにのっているEdward Gamingでは、やはり後者に分があるようだ
GG.BET(海外のベッティングサイト)のオッズ
Paper Rex勝利 3.29倍
Edward Gaming勝利 1.81倍
Twitch公式放送での視聴者予想
Paper Rex勝利 41%
Edward Gaming勝利 59%
1st FRACTURE
( pick - Edward Gaming Attacker Side - Paper Rex )
ファーストマップのフラクチャーはこのような結果になった。
開幕のピストルからいきなりZmjjKKのクアドラキルで幕を開けた。
3rdラウンドでZmjjKKはT1戦でも見せたオーブ回収からのブレイドストーム、そして確実に3キルを取りPaper Rexを完封してみせた。
5thラウンド、ZmjjKKは「オペレーターで一人抜く→下フリックスプレー→もう一人フリックで抜く→下フリックスプレー」という驚異の缶さばきを見せ、会場は大いに沸いた。
そのZmjjKKは7thラウンドで早くも2回目のブレイドストームを出し、ダブルキルで完封しチームもリードを広げた。
試合はEdward Gamingペースで進んでいき、前半を8−4リードで折り返す。
ZmjjKKはこの試合の前半、ACS 408、KDA 3,3という驚異のスコアを残している。
さらにEdward Gamingは後半のピストルも勝利、その後もリードを広げていく。
14thラウンドは武器不利のPaper Rexの上手いスポーン詰めからの2キルに対し、CHICHOOが一人で3キルして破壊、15thラウンドはCHICHOO、ZmjjKKのそれぞれに凄まじいフリックがあり、この時点で11-4とリードを広げる。
しかしEdward Gaming勝利ムードの漂う16ラウンドからPaper Rexは粘りを見せ始め、一挙にラウンドを6連取。息を吹き返す。
特に19thラウンドは困難と思われたリテイクを、各々の撃ち合いだけでサイト内を力技で取りかえし成功させてみせた。
さらに21th、22thの両ラウンドをJingggの4キルと2キルで取り切ってついに同点に追いつく。特に22thラウンドのダブルキルは、頭半個も見えていない相手を2タップで2枚抜く考えられないようなプレーだった。
そして23thラウンドは人数不利の中設置されるも、またも撃ち合いだけでリテイクを成功させついに逆転、なんと先にマッチポイントに到達したのはPaper Rexだった。
しかしEdward Gamingもすんでのところで譲らず、試合はオーバータイムへ。
それでもPaper Rexは流れを渡さず、25th、26thラウンドをcgrs、d4v41、mindfreakらの活躍で取り切り、ゲームセット。
なんと勝利したのは4-11からの衝撃的なカムバックを成し遂げたPaper Rex。
「恐竜は倒れない」実況の岸大河の声が、意気揚々と控え室に引き上げていくPaper Rexの背中を推した。
2nd SPLIT
( pick - Paper Rex Attacker Side - Edward Gaming )
セカンドマップのスプリットの結果はこのようになった。
開幕のピストルはf0rsakenのBメイン耐え、JingggのダブルキルでPaper Rexが取得するも、2ndラウンドはEdward Gamingのスリフティーとなる。岸大河「ZmjjKKは奪ったジャッジで走り出す。」
流れの悪かったPaper Rexだったが、6thラウンドヴァイパーズピットに飛び込んだd4v41がオフアングル3連勝負に全て勝ち、1v3クラッチ。
7thラウンドもd4v41は上手すぎた。Bサイト内でエントリーの背中を取り1キル、死なずにEdward Gamingをサイト内にフタをしてJingggのエントリー経路を確保、さらにシメの1キル。完璧な立ち回りをみせた。
さらにd4v41は9thラウンドAスロープで裏どりを決め、スティンガーでトリプルキル。2ndの借りを返すスリフティーとなった。
そして12thラウンドはタイの守護神cgrsがトリプルキル。驚異的なリコイル制御でPaper Rexを救い、前半を6-6の同点で折り返した。
後半ピストル、全員がゴースト購入のEdward Gamingに対し、トレイルブレイザーからこちらは全員がWキー押し込みのPaper Rex。本領を発揮したのはアジア王者だった。
しかしEdward Gamingも喰らい付いて離さずラウンド4連取。
そして先にマッチポイントに到達したEdward Gamingがそのままの勢いで逃げ切り、試合は再びディサイダーマップへともつれることになった。
Decider LOTUS
( Attacker - Edward Gaming Defender Side - Paper Rex )
ディサイダーマップのロータスの結果はこのようになった。
開幕のピストルはまたもPaper Rexが取得。そのままPaper Rexは序盤にペースを掴み、徐々にリードを広げる。
前日にこのロータスで大敗を喫したFnatic戦に比べディジーが刺さる場面が多く、それとオーディンを構えるf0esakenの二段構えによって、Paper RexがCマウンドのエリアを取る展開が増えていた。
苦しめられたEdward Gamingは一時1-6と大幅にリードを開け渡す。
9thラウンドにはd4v41のオペレーターが覚醒。腕しか出していないZmjjKKを抜き、さらに一瞬のクイックスコープでダブルキル。
目まぐるしい前半は8-4でPaper Rexがリードして折り返す。
後半のピストルはしかしEdward Gamingが素早いリテイクを通し切り取得。
しかしJingggにキルが回り、まさかの後半3rdラウンドでアルティメットが上がったことで、その15thラウンドはたった5秒でサイトを制圧する展開となった。
それでもEdward Gamingは徐々に追い上げていき、エイムぴったんこカンカン(岸大河 談)も飛び出し1本差まで追い縋るも、その勢いを削ぐかのようにPaper Rexは18thラウンドスリフティー。
そのまま19th、20thラウンドと連取を続け、先にマッチポイントに到達したPaper Rex。
来る21thラウンド、最後の1v1に残されたのはCHICHOOと、cgrsだった。
緊迫の1on1を制したのはなんとcgrs。somethingの欠場でやってきた出番。試合後に明かされたところによると、練習期間はわずか10日程度だったという。pacific MVPの代役というあまりに重すぎる重圧を背負い戦い続けた男のガッツポーズは、VALORANTの歴史に、そしてなにより観客の心に深く刻みつけられたことだろう。
次の、世界ベスト4というラウンドに駒を進めることとなったのはpacificの王者、Paper Rexだった。
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